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“最期のとき”がSNSに公開されたら、あなたはどう思う?

2020年2月18日のニューヨークタイムズに、「The iPhone at the Deathbed」という記事が掲載された。
直訳すると、死の床にあるアイフォン。何とも不気味なタイトル。どういうことだろうか。
https://www.nytimes.com/2020/02/18/style/iphone-death-portraits.html)。

 

記事の中では、最愛の人の最期のときを写真や動画で記録する人達のことが紹介されている。そこには、家族が看取るまでの様子、葬儀の風景、ご遺体の写真がおさめられている。
そして、それらの写真をSNSで公開する人もいる。
ノースカロライナ州に住むヘアメイクアーティストの30代の男性は、2016年に母親を亡くした。彼は、病院のベッドの上で、母親の髪を整え、メイクをし、そしてドレスを整えて、頬にキスおして、棺に納めた。その様子を、夕方、Facebookに投稿すると、1日で、25,000件の「いいね!」がおされ、15,000回以上共有されたという。
彼の投稿には、「お母さんの姿がとても美しかった」「お母さんへの思いやりにあふれている」「自分も家族と、同じような経験ができたらいいのに」といったコメントが寄せられたという。

デス・ポジティブ・ムーブメント(Death Positive Movement)という動きが、アメリカで注目されている。「よりよい生のために、よい死を」がコンセプトで、死をタブー視せず、自然なものとして捉えようとする動きである。死について語り合うデス・カフェや、死をテーマとしたワークショップやパフォーマンス、動画の公開などを行っている団体もある(http://www.orderofthegooddeath.com/)。
今回紹介したこの記事も、デス・ポジティブ・ムーブメントの一つとして捉えられるだろう。

 

日本でも先日、棺の中で眠る野球監督の野村克也さんの写真を、ご家族がSNSに載せたことが物議をかもした。不謹慎だというコメントが多くみられる一方で、「最後<引用ママか>の姿を見られて幸せ」というファンのコメントもあったという(https://www.jprime.jp/articles/-/17271)。

 

“最期のとき”を、不特定多数の人に公開することをどう捉えるか、非常に価値観が分かれる。故人がそれに同意していたか、撮影した人との信頼関係は・・など、さまざまな検討が必要だ。

 

ただ、死がタブー視されてきた日本社会において、「死までをどのように生きたいのか、どのような旅立ちをデザインして、どのように後始末をしてほしいのか」…家族や身近な人たちと語り合うきっかけになるのではないだろうか。
最期のときの写真等を公開することは「YESかNOか」の議論ではなく、そこにいたった背景や公開の意図、そして、自分ならどうしたいか、率直に語り合うことで、ネット社会となった現代における「よりよく生きて、よく死ぬ」を考える動機付けとなるのではないだろうか。

 

QoD総研研究員 井上瑞菜

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