人生の後半、どこでどう暮らすか、そして最終段階はどのような医療やケアを受けて最期のときを迎えるか…あなたは、考えたことがあるだろうか。
考えたことがあるとしても、家族や身近な人と話し合い、自分の意思を伝えた人は多くはないと思う。
それを裏付けるようなデータがある。
「あなたが死に近い場合に受けたい医療・療養や受けたくない医療・療養につていて家族や医療介護関係者とどのくらい話し合ったことがありますか」という問いに、「詳しく話し合っている2.7% 一応話し合っている36.8% 話し合ったことはない55.1%」という回答があった(「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」平成30年3月)。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/saisyuiryo.html
人生の最終段階における医療は、最期まで尊厳をもって人生をまっとうするためにも、重要な問題である。
それゆえ、人生の最終段階に、自分はどこで、どういう医療やケアを望むのか…そのあり方を前もって考え、家族や医療・ケア従事者とともに話し合うという「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」が推進されている。
なお、厚生労働者は、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を作成し、さらにより馴染みやすい言葉として普及させるため「人生会議」という愛称で呼ぶことに決定した。その後、ポスターが公表されたが、画像や文面に「配慮が足りない、誤解を招く」という批判が寄せられ、自治体への発送は中止されるというエピソードがある。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html
https://news_yahoo.co.jp/byline/otsushuichi/20191127-00152518/
★ACPの目標と進め方
本人の意思を尊重した医療・ケアを提供し、尊厳ある生き方を実現することが目的であり、本人の意思が第一である。
ACPの話し合いは、将来の変化にそなえて、早めに開始して、繰り返して話し合うことによって本人の意思を共有すること。たとえ意思表示が困難となっても、本人が少しでも理解できるよう手段を講じて意思をくみとり、本人が望む医療・ケアを受けることができるようにするのが本来のあり方である。
では、どのようなことを話し合うのだろうか。
話し合いは、本人と家族等、本人にかかわる多職種の医療・ケア従事者等が参加し、ACPファシリテーターによって対話が促進していく。話し合う内容は、本人の状況等により異なるが、例としてあげると次のようなことがある。
・本人の状況(家族構成や暮らし方、健康状態、治療方法や介護保険サービスのこと等)
・本人が大切にしたいこと(これまで大切にしてきたこと、これからどのように生きたいか、大切な人に伝えておきたいこと、最期の時間をどこで、誰と、どのように過ごしたいか、代わりに意思決定してくれる人はいるか等
・医療・ケアについての希望(痛みや苦しみを和らげたい、自然なかたちで最期を迎えたい、可能な限り生命を維持したい等)
人生という物語の最終章は、自分らしく完成させたいと思う。そのためには、最期が近づいたときに考えるのではなく、ライフプランとともに、いまから考えて、自分の意思を表しておく必要があるのではないだろうか。
<参考資料>
ACP事例集(一般社団法人日本老年学会が公表)
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/acp_example.html
家族との話し合いや自分の考えを整理するために役立つノート「いきいきと生きて逝くために」(発行:公益社団法人 全国国民健康保険診療施設協議会)。
https://www.kokushinkyo.or.jp/endingunoto/tabid/456/Default.aspx
(一柳ウェルビーイングライフ代表理事 一柳弘子)