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葬儀のスタイルも随分と変わってきました。コロナ禍前から家族葬が葬儀業界の主流になってきたといわれていますが、家族葬といっても考え方はそれぞれ違います。家族で考えた葬儀、家族でつくりあげる葬儀という概念が家族葬には必要なのだそうです。それが根底にあると語るのが、葬祭ディレクターの片桐真樹さんです。家族葬は「葬」という字ですが、私たちは想いの「想」とか、創造の「創」とかという気持ちでいるということでした。
片桐さんは、葬祭ディレクターをはじめ、海洋散骨アドバイザー 、動物葬祭ディレクター、終活カウンセラーなど様々な肩書きを持っていますが、前職はテレビ業界で仕事をしていたそうです。
その片桐さんが葬祭に興味を持ったのは、火葬場を見学した際に死に関わる人たちはどういう気持ちで仕事をしているのかと強い関心を持ったことでした。それが葬儀という仕事に関わるきっかけになったとお聞きしました。
いまでも火葬場にいったときは、携わった者として必ず最後に焼香しているそうです。「この度、最期のご縁をいただきまして、本当にありがとうございます」という気持ちで焼香するのは、そこにご縁を感じるからだと語られました。片桐さんは生きているときのご縁はなくても、亡くなってからご縁があったことを大切にしているのです。
現在、終活がブームになっています。それでも、自分の葬儀を終活のなかで考えることはあまりありません。葬儀の際に、「掲げる写真を決める」、「棺に入れるお花を決める」、それだけで構わないのだそうです。「ただそれだけで自分の意思を葬儀に表すことになり、家族や参列者とのご縁を繋ぐことになります。当然、命というものは繋ぐことはできませんが、自分の気持ちや存在は継承していくことはできます。」と片桐さん。生きているうちに自分の葬儀のことを考えておくことの意義を気づかせてくれました。
その片桐さんが提案しているのが「終活適齢期」です。人生において終活適齢期というようなものがあってもいいと考えるのはたいへん納得できるものでした。終活適齢期は自分の人生のひとつの指針になると思います。
日本はいま人生100年時代を迎え、超高齢社会にあります。一般的に高齢者といわれる年代は65歳以上ですが、70歳を迎えるのであれば、そろそろ今までの自分の人生を振り返りながら、次の自分のためにやっておけることを考えることで、これからの人生の不安を取り払い、前に向かって歩んでいけるはずです。
例えば、家のこと、お金のこと、医療や介護のこと、相続や遺品の整理、そして葬儀やお墓のことなど前もって決めておくべきことが数々あります。
「それを考える適齢期が、たぶん70歳。それを第１期終活適齢期としましょう。人生100年時代なのでまだ70歳から30年あります。70歳を過ぎてまた新たに自分を振り返ることができたら、その次の終活適齢期です。」という片桐さんが考える終活適齢期というのは、死への準備ではなく、次を生きていくための準備です。生きていく過程で、自分の環境や身体の状態が変わってくるはずです。いつ認知症になるかもわかりません。判断能力がなくなる前に自分を見つめ直す時期をもつことは必要なことだと思います。
死を考えることは決して後ろめたいことではありません。余命を宣告されたときにではなく、普段から葬儀の話ができるような環境ができれば、写真やお花など些細なことも話し合って葬儀の場を故人の気持ちに沿ったものにできるでしょう。
人はそれぞれに違った終活があります。葬儀を担当する際、片桐氏は「お客さまが求める葬儀とは何か」を引き出して、最良の空間をつくることを大切にしてきたといいます。故人の意思が表れるならば、葬儀は人が集まる場所として、亡くなった人が再び結んでくれたご縁の場所といえるでしょう。
葬儀も終活のひとつだとする片桐氏にとって、「あなたの終活の何かを今日、見つけましょう」というのがいつも胸に抱いている終活のテーマだそうです。
（2023年5月16日取材）
片桐真樹 プロフィール
1973年 新潟県長岡市生まれ
厚生労働省認定葬祭ディレクター技能審査1級葬祭ディレクター 、日本石材産業協会認定 2級お墓ディレクター、日本海洋散骨協会認定海洋散骨アドバイザー 、日本動物葬儀霊園協会認定2級動物葬祭ディレクター、終活カウンセラー協会認定終活カウンセラー初級
駿台トラベル&ホテル専門学校葬祭ディレクター学科学科長として業界を目指す若者を教育
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